1→9→5、7、10、8、2、11
1→5、7、10、8→9
ブエナビスタには頭が上がらない。デキが下降すれば這い上がるには苦労するようなすっきりしすぎの馬体だが、見た目とは裏腹にひと叩きで見事な復活を遂げている。昨年のジャパンC降着からどうにもリズムや運の悪いレースが続いていただけに、展開からも前走の評価を落としたが、終わってみれば女王復活の序章にすぎなかった。
歯がゆい競馬続きにはっきりした敗因がある。昨年の有馬記念はスローに泣いた展開負け。4走前のヴィクトアマイルは距離適性の差。3走前の宝塚記念はこの馬の勝ちパターンだったが、相手が予想以上に力をつけて時計勝負を前々で振り切られたということ。休み明けの天皇賞は内で包まれて脚を余す展開のアヤだった。力負けは宝塚記念の1戦だけ。5歳にしてほぼピークのデキ。円熟味を増した最強馬には、これだけ入念に追い切れば前走の反動も考えられない。
ツキが上向いていることは確かだろう。前走も向正までレース前の予想どおりの超スロー。それがウインバリアシオンの大マクりでレースが流れてこの馬には理想的な流れになった。本来なら内で包まれることが確実なラップが、一気にペースアップしたおかげで、直線入口ではいくらかバラけた隊列。天皇賞のように抜け出しに時間がかかることもなく、スムーズに馬群を捌いて貫禄差し。勝ちパターンに持ち込んだトーセンジョーダンを着差以上の楽な勝ち方は、ダメージの心配もしなくていい。
ブエナが負ける際は必要以上の後方待機に限られた。前走のレースぶりと意欲的な追い切りから反動なしと評価すれば、問題は展開だけとなる。その位置取りだが、絶好枠を引けばいつも以上にスタート直後から仕掛けるのは当然で、逃げ馬の直後で立ち回った2年前の有馬記念の位置取りがようやく再現できる。
この馬が有馬記念に勝てないのは単なるツキのなさが数字から浮き彫りになっている。過去20年の1300通過で比べると尋常ではない超ハイペースだったのが2年前。2番目に遅かったのが昨年でその差は5秒1。これだけの落差がありながら、2年前は逃げ馬の直後という積極策、昨年は前々決着を1頭だけ後方から差してくるという真逆の位置取りで連続2着に凄さが表れている。
過去2年が年7戦目、今年は6戦目。後半一気にペースアップするサバイバル戦で無駄な脚を使わなくていい枠順を引けば、むしろ走って当然の条件が揃ったと言える。
ウインバリアシオンが強引な乗り方からジャパンC5着でオルフェーヴルの三冠に箔がついた。同じ三冠馬ディープインパクトでも、ディープ以外のレベルはかなり低かった事実。ある程度の世代レベルで無敵の存在にまで完成された成長力ならば、兄ドリームジャーニー以上の活躍が確約される。
何と言っても際立つ大一番での強さ。皐月賞は次元の違う瞬発力で他馬を圧倒。ダービーは直線入口で前が狭くなって進路変更を余儀なくされるも、終わってみれば3着馬に1秒4差の大楽勝。菊花賞は馬任せのマクりで直線早々に先頭に立って最後流して菊花賞レコードに0秒1差まで迫った。
超スローを前々走で経験して瞬発力勝負にも時計勝負にも対応可能なレースセンスを示せば、鞍上も自信の騎乗か。不可解な負けとなった京王杯2歳Sを除けば、ウインバリアシオンの次点となった2度だけ以外はキャリアすべて最速上がりの爆発力。ブエナに匹敵。
5歳時に夏を越して一変したトーセンジョーダンの成長力も無視できない。過去10年で勝ち時計がワースト2だったAJCCなどいかにもGU限界の重賞ホルダーのイメージが強かったが、4角手ごたえが悪いながら短い直線で競り勝った札幌記念をきっかけに走るたびに凄みを増している。
超ハイペースとはいえ、天皇賞秋は見事な直一気。レコード勝ちのおまけ付きで完全本格化を示した。前走も強気の先行策が奏功して残り1ハロンで先頭。並ばれてもうひと伸びした勝負根性など以前とは別馬のようなレースぶりになっている。直線の長さだけが生命線になるような典型的なジャングルポケット産駒ではなく、鞍上の意のままに折り合える自在性で中山(3001)は脅威。
エイシンフラッシュの天皇賞秋はこの馬でもハイペースの位置取りで納得の鋭さ負けだが、前走は絶好位から不可解な不発だった。ダービー馬だが、意外に左回りの東京に良績のない現状から、やはり右回りで完全燃焼のタイプか。いずれにしても追い切りは首の使い方が前走より良化して体調的には叩き3戦目で最高潮。鞍上も2度目なら前々走のようなミスはない。ここで走らなければ狙いどころはない。
ルーラーシップはスタート直後に隣の馬にぶつかったことより、終始外々を回らされたことが敗因だが、3ヵ月以上の休み明けで馬券圏内に入った馬は過去20年、トウカイテイオー、ライスシャワー、マーベラスサンデーのわずか3頭だけ。そのすべてが90年代ならぱ、近代競馬ではほぼ消しのステップということ。年明けの重賞取りが青写真か。
ヴィクトワールピサの前走は試走に徹した叩き台。ある程度人気を背負ったにもかかわらず、スタート直後から最後までやる気を示さず、単に回ってきただけの調教替わり。日本馬場で初の馬券圏外となったが、馬体の造りなどまったく陰りを感じさせない雰囲気ならば、前走だけで見限るのは危険。
大外枠というよりペースを読めずにハイペースで自滅したアーネストリーは最悪なリズムで大一番を迎える。休み明けの前々走で12キロ減は6歳馬としては、致命的にもなる馬体変動。案の定、前走で故障したような直線失速ぶりでは、短い時間での一変は考えにくい。
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