2、6⇒5⇔2、6、1 (8点) 2、6、1
同じ良馬場でも単純に時計だけを比較できないのが近年の競馬。週中の水撒きで馬場の調節を行っているという最悪な現実だが、詳しく調べると如実に馬場差が浮き彫りになってくる。
アーモンドアイの安田記念はスタート直後に不利を受けたとはいえ、4角では勝ち馬インディチャンプよりわずか2馬身差後ろ。スタート不利は無視してヴィクトリアMと昨年の安田記念を比較する。
ヴィクトリアM
1分30秒6 5F通過56秒7上がり33秒9
同日古馬2勝牝クラス 二千
1分58秒3 5F通過60秒0上がり34秒4
同日古馬1勝クラス 千四
1分19秒9 5F通過56秒0上がり35秒1
安田記念
1分30秒9 5F通過57秒0上がり33秒9
同日古馬2勝クラス 二千
2分0秒1 5F通過63秒1上がり33秒2
同日古馬1勝クラス 千四
1分21秒0 5F通過58秒2上がり33秒9
古馬2勝クラス比較で今年は昨年より1秒8速い勝ち時計。3秒1速いラップで1秒2遅い上がり。
古馬1勝クラス比較で今年は昨年より1秒1速い勝ち時計。2秒2速いラップで1秒2遅い上がり。
ラップ差を割り引いて低く見積もってもヴィクトリアMは昨年の安田記念より1秒近く速いことが決定的。同じような時計でもヴィクトリアMと昨年の安田記念はレベルひとつぐらいは違うか。
今年と昨年の安田記念のメンバー比較はどうか。
昨年の安田記念(レース前までの千六戦績)
1番人気
アーモンドアイ (300000)ベスト1分33秒0
2番人気
ダノンプレミアム (300000)ベスト1分32秒6
3番人気
アエロリット (140121)ベスト1分30秒9
4番人気
インディチャンプ (410200)ベスト1分31秒9
5番人気
ステルヴィオ (220000)ベスト1分33秒3
6番人気
サングレーザー (113011)ベスト1分31秒3
今年の安田記念(レース前までの千六戦績)前日人気
1番人気
アーモンドアイ (401000)ベスト1分30秒6
2番人気
インディチャンプ (710201)ベスト1分30秒9
3番人気
グランアレグリア (301010)ベスト1分32秒7
4番人気
ダノンキングリー (200010)ベスト1分33秒4
5番人気
アドマイヤマーズ (600001)ベスト1分32秒4
6番人気
ダノンプレミアム (310001)ベスト1分32秒6
如実にわかるレベルの違い。アーモンドがスケールアップしているとはいえ、他馬もそれ以上のスケールアップ。マイルのスペシャリストの集まりにもかかわらず、昨年は千六1勝馬が2頭も人気馬に存在したこと。さらにアエロ、サングは東京未勝利だったこと。
マイル戦で最も過酷と言われている東京千六にGⅠ級の実績もない馬が人気だったことから、メンバーレベルは昨年より今年は一段どころか、二段も三段もステージが上がっている。
アーモンドアイは取りこぼすと決め打ちの予想でいく。外厩頼りの厩舎、常にレース後は休養がベストのリズム、現実に牡馬相手の古馬GⅠマイルでは未勝利。致命傷になる条件が3つも揃っただけに人気ほど絶対的な存在でもないことがわかるはず。いずれにしても高く見積もってオープン特別程度のレベルの牝馬に圧勝の前走で牡馬とこれほど人気差がつくのは違和感しかない。天皇賞秋のメンバーより格段に強化されたマイルのスペシャリスト相手に単勝100円台は人気過剰そのもの。
確かに勝ちっぷりは豪快そのものだが、負けた際の淡泊さも同居している。デビュー戦は完全なる試走で論外だが、昨年の安田記念と有馬記念はもう少し走ってもよかっただろう。安田記念はスタート直後に致命的な不利を受けたとはいえ、直線入口では勝ち馬よりわずか2馬身後ろの位置取り。時計は1分30秒台、上がりは32秒台の極限勝負としても安田記念の前走、前々走はそれぞれ上がりNo4、2で安田記念も終わってみればメンバーNo5だったインディを差し切れなかったのは意外だった。さらに前々走が決定的な印象の悪さ。現役最強馬が直線でもがく姿は距離不適を割り引いても不甲斐なかった。
無敵に近かった最強牝馬もすでに5歳。母フサイチパンドラは4歳暮れに引退、最後の勝ち鞍は4歳夏、最後の連対は4歳秋だったことからも衰え始めた可能性が否めなくなっている。あっさり勝っても取りこぼしても驚きはない。
先ほどの馬場差比較でもインディチャンプの凄さが表れている。持ち時計はアーモンドが上回るが、馬場差を考慮すればインディに価値を見出せる。
昨年の安田記念1分30秒9はレースレコード。アーモンドより0秒5も下回る上がり時計とはいえ、残り2ハロンでは外へコース変更の際に6着馬をぶつけながら自らの進路を確保する強引さ。残り1ハロンからの反応の良さはまさにGⅠ級の鋭さがあった。マイルCSは人気的に気楽に乗れたことを割り引いても、過去10年でレースの上がりNo3を好位差しで決めたのだから恐れ入る。直線坂コース(512200)。課題は海外を除いて通算で負けたレース6戦中5戦も占めていること。末脚に鋭さはあっても意外に一瞬だけ。追い出しを残り1ハロンまで我慢しなければならないことなど、スローのパンパンの馬場勝負ではどこか不安が頭をよぎる。前日の雨でどこまで回復するかが焦点。昼までに稍重になるような回復スピードが理想か。
ダノンキングリーの前走は乗り替わりが裏目に出たとはっきり割り切れる。これまで逃げたことのない馬をまさかのハナ。各馬の恰好の目標になったこともあるが、一番の問題は乱高下するラップだろう。体内時計が完全に狂い始めているロートル騎手が衰えを決定づけるアクセルとブレーキの乱用。初めて逃げを経験する馬にとってリズムが悪すぎたことは言うまでもない。1、2着馬は前2頭から少し離れた集団先頭、2番手で決まったことが決定的な証拠だ。1度の成功(前々走)で2度の失敗(3走前と前走)は鞍上とのコンビ間の悪さ。乗り替わりならば改めてキャリア2戦目で中山1分33秒台を叩き出した過去の実績が見直せる。千八3勝、最速上がりから毎日王冠で差し切り勝ちを決めたインパクトは強いが、体型的にはマイルベストに異論はない。共同通信杯、毎日王冠の重賞2勝を含む東京(310000)と休み明け(301000)。主戦の快気祝いとしてのレースになっていい。
ダノンキングリー、ダノンスマッシュの存在があってダノンプレミアムはマイル路線を歩めないのか。キャリア2戦目で東京千六重賞でレコード勝ち、続く朝日杯も貫禄勝ちで連勝を決めたにもかかわらず、ダービーに色気を出してエリート路線から逸脱した。現実に2歳以来、GⅠ勝ちがない。前走は賞金の高さもあって遠征したはずだが、コロナの影響で賞金が減額になる不運。しかも道悪となって勝てないという誤算。前4走~前々走まで上がり時計No16、7、7。中距離とマイルのどっちつかずの中途半端さがますますこの馬自身をワンペース魔と化けさせているようだ。確たる逃げ馬不在、絶好枠、変幻自在の名手配置。強気の逃げの選択も悪くない。前々走はスタート不利でレース終了。控える競馬ではまったく策がないだけにどんな選択にしてもスタートで勝負が決まる。
グランアレグリアは前日の雨で馬場悪化だけが頼り。良馬場では時計勝負も上がり勝負も太刀打ちできないことが数字にもはっきり示されている。持ち時計はNo8、単純な上がり時計比較はNo6、千六限定の上がり時計でNo8でまさに"標準"、"普通"。レースレコードの桜花賞さえ、少し行きたがり、続くNHKマイルCは完全に引っ掛かって自滅する始末。前2走からも千四以下ベターなスプリンターよりのスピード型として成熟し始めている。外枠を引いて知恵と工夫が必要な条件だが、4角ブン回しが専売特許の鞍上配置はどう捌くか。重に近い稍重まで回復した馬場のみの狙い。
ダノンスマッシュは良~稍重が限界という非力なイメージを前走で確立してしまった。さらに千六にはまったく良績のないスプリンターが不運な大外枠で完全なるギブアップ状態。GⅠ未勝利、GⅡは9年間未勝利の鞍上にマジックを望むのもできないだろう。前走で自身の上がり時計ベストを更新から、もう1度ハナを切るしかない。とにかく控えた時点で上位はあきらめ。
時計を求められても瞬発力を求められても数字的な裏付けのないアドマイヤマーズには八方ふさがり。プレミアムもスマッシュも降ろされた鞍上の奮起に期待したいが、GⅠでの凡戦連発はもう矯正不可能なほど深刻になっている。気楽に乗れる立場の馬でも保守的な乗り方が鞍上の特徴。このコンビで意外性は期待できないか。千六(600001)ほど怖さはない。
ノームコアは前走でアーモンドに逆転不可能なほどの完敗。道中はマンマークで1馬身差後ろからだったが、4角で一瞬にして2馬身差に開いて追い比べ。4角の手応えはひと息だったとしても、さらに置かれた反応の差は同じ条件で変わりようがないだろう。レコード勝ちとなった昨年のヴィクトリアMだが、同日の古馬2勝クラスで1分32秒6の超高速馬場。昨年の安田記念はもちろん、今年のヴィクトリアMよりも価値は低い。渋り気味程度の馬場悪化のままを願う。
|