4、2⇒4、2、1、17、10⇒
4、2、1、17、10、16、5、12 (48点)
16-4、2、1、17-4、2、1、17、10、5、12(18点)
クラシックでキャリアの少なさがネックになって経験値の低さからモロさやポカを連発していたのは今や昔。本来ならばきっちりした王道ローテに耐えられる馬体と精神力。心身ともに鍛えてこそのクラシックロードだったが、外厩施設の充実がすべてをひっくり返した。
競馬歴が長いほどクラシックでキャリア3、4戦目の挑戦馬が扱いにくくなっているが、特にここ2年で様相は一変している。フサイチコンコルドのキャリア3戦目のダービー制覇より衝撃が強かった事例はないとはいえ、キャリア3戦目の桜花賞制覇は思考変換のスイッチを完全に押された気分だった。もちろん、それまでも布石はあった。昨年はサートゥルナーリアが休み明けで皐月賞制覇、ラヴズオンリーユーはキャリア4戦目のオークス制覇。今年に入ってから皐月賞もコントレイルが休み明けを快勝など、この2、30年であり得なかった条件を簡単にクリアしている。ローテやキャリア云々はもはや"昭和的"な考えとして重要でなくなっている。
オークスで距離云々は愚問中の愚問であることを毎年言っているが、今年の場合は特に関係ないだろう。ハイレベルのマイラーには簡単にクリアできるオークス二千四。歴代の好走馬を並べても、このオークスだけ長距離を克服したマイラーが多数存在することからも歴史的な裏付けがある。高い完成度に勢いが加わってプラスアルファの走り。いずれにしても千六以上で走った実績があれば距離の問題はない。
桜花賞が23年ぶりの道悪競馬でオークスにそれほど直結しないという考えは無理がある。今年の内容は超がつくほどレベルが高い可能性さえある。直前の古馬3勝クラスの千二で1分9秒9という極悪馬場。ごく普通に良馬場の標準的な勝ち時計が1分8秒前後で良馬場との馬場差は千二で2秒ほど。マイルとなる2.5~3秒。さらに桜花賞まで一気に雨量が増えて馬場がますます悪くなったことを考慮すると低く見積もっても3~3.5秒ほど時計が掛かった計算でいいだろう。桜花賞を良馬場に換算すると1分33秒前後、悪くても1分33秒半ば。歴代の桜花賞馬にヒケを取らない結果だったということを強調しておきたい。
これまでキャリアやローテが大きなファクターだった"昭和"らしさならば、最近は特に瞬発力が重視されるのが"平成・令和"らしさ。
16年
1着シンハライトは最速上がりが1回、前3走で連続の上がり33秒台以下。
2着チェッキーノは最速上がりが4戦全最速上がり、上がり33秒台の経験なし。
3着ビッシュは最速上がりがキャリア3戦中で2回、上がり33秒台以下の経験なし。
これらの馬以外のメンバーで最速上がりが3回以上経験馬は
アットザシーサイド 最速上がり3回もすべて千四。
ジェラシー 最速上がり3回も新馬と未勝利で2回。キャリア6戦もあるが重賞経験なし。
17年
1着ソウルスターリングは最速上がり2回、上がり33秒台以下2回。桜花賞3着馬で重賞馬。
2着モズカッチャンは最速上がり2回、上がり33秒台以下1回。前走は重賞勝ちで最速上がり。
3着アドマイヤミヤビは最速上がり最速上がり2回、上がり33秒台以下3回。前々走が重賞勝ちで最速上がり。
これら以外で最速上がりが3回以上経験馬は
ハローユニコーン 最速上がり5回も新馬、未勝利で3回。上がり33秒台以下が0回。重賞未経験。
ディアドラ 最速上がり4回、上がり33秒台以下2回。桜花賞で最速上がりもキャリアはすでに10戦。
ディーパワンサ 最速上がり3回、上がり33秒台以下1回。デイリー杯で最速上がり経験も年明けに経験なし。
リスグラシュー 最速上がり3回、上がり33秒台以下3回。ジュベナイルFで最速上がりも年明けに経験なし。
カリビアンゴールド 最速上がり3回、上がり33秒台以下1回。重賞経験は1回で二桁着順。
18年
1着アーモンドアイは最速上がりがキャリア全4戦すべて、上がり33秒台以下2回。
2着リリーノーブルは最速上がり1回、上がり33秒台以下2回。ジュベナイルFと桜花賞で上がりNo3。オークス最内枠。
3着ラッキーライラックは最速上がり3回、上がり33秒台以下3回。
これら以外で最速上がり3回以上の経験馬はなし。
上がり33秒台以下を3回以上の経験馬は
マウレア 最速上がり2回経験。上がり33秒台以下を3回経験。チューリップ賞で最速上がりもキャリア6戦。
19年
1着ラヴスオンリーユーは最速上がり全3戦すべて、上がり33秒台以下1回。重賞経験なしも二千を経験。
2着カレンブーケドールは最速上がり2回、上がり33秒台以下3回。キャリア5戦、前2走で上がり33秒台以下。前走が千八。
3着クロノジェネシスは最速上がり3回、上がり33秒台以下4回。
これら以外で最速上がり3回以上の経験馬は
シゲルピンクダイヤは最速上がり3回、上がり33秒台以下2回。桜花賞でも最速だったが、キャリア4戦、1勝馬。
ノーワン 最速上がり3回も千四以下で2回。上がり33秒台以下0回。
まずは最速上がり3回以上の経験があり、上がり33秒台以下の経験もある程度求められている。最速上がりの経験が少なくても上がり33秒台が3回以上あれば合格。未勝利勝ちまでに2回以上の経験馬は減点、キャリアは多すぎても減点で2勝以上がひとつの目安になっている。
前走の反動などを無視すれば、もちろんデアリングタクトの主役は決定的。キャリアの少なさがまったく気にならないほどレースぶりも大人びている。とにかく1戦ごとの成長力が半端ない。デビュー戦はごく普通の勝ちっぷりだった。時計は平凡。上がりレースラップ12秒2-11秒7-11秒3を差し切ったことだけが強調点だった。外コースとはいえ、同日の古馬1勝クラスが1分34秒0からもそれほど特筆するような数字でなかったことは間違いない。
前々走はいくらか骨っぽい相手で再び加速する上がりレースラップ。12秒0-11秒7-11秒4。4角前に一気に仕掛けて直線入口で先頭まで7、8馬身差はあったが、残り1ハロンで先頭に立つまでが速かった。馬場の真ん中を突き抜けて残り100から流す横綱相撲だが、同日の古馬1勝クラスと同レベルだったことも事実。キャリア2戦目でこの時計なら上々とはいえ、桜花賞はさすがに半信半疑だった。さらに桜花賞としては珍しい極悪馬場。キャリアの少なさで軽視したが、流れがはまっただけでは到底走れない厳しい条件の中で着差以上の圧勝劇。ただただ脱帽するしかなかった。
今年の桜花賞は先行馬にとって地獄のラップ。久しぶりに"魔の桜花賞ペース"になった。直前の古馬3勝クラスの千二で5ハロン通過が57秒6に対して桜花賞は58秒0。差し追い込み馬有利の流れだったことを割り引いても4角前の手応えと反応の良さ。直線入口で先頭まで6、7馬身差から残り300のムチ連打で着差以上に余裕の差し切り勝ちは凄みさえ感じさせている。大舞台で上がりNo2より0秒5も速い最速上がりはまさに異次元レベルだろう。馬場を問わないオールラウンダーの瞬発力型。前走からさらなる成長がうかがえれば、再び最後流すような再現レースになっても驚かない。
デアリングが強さで脱帽ならば、クラヴァシュドールは惨敗確定の不利を受けてからの巻き返しに驚いた。3角前から手応えが怪しくなり始めたと同時に馬群がタイトになって故障のようなズル下がり。一気に4馬身ほどロスしている。そこから腹をくくって馬場の悪かった内ラチから1、2頭分の立ち回り。もちろん、手応えは悪かったが、直線でガラガラの内目からは唯一この馬だけ伸びてきたことで勝ち馬並みの中身と収穫があったと確信している。
昨年暮れの勢力図からは完全に一変しているものの、当初はクラシック有力馬だったハーツ産駒の1頭。千六で1分33秒台以下を連発している絶対スピードとサリオスを上回ったこともある非凡な瞬発力。1勝馬であること、年明けに最速上がりの経験がないことなど、最近の好走傾向と反する数字も並んでいるが、デアリングと何ら遜色ない能力を兼ね備えていることは過去の数字が物語っている。体型的にはデアリングより距離の適性が高いか。
キャリアはわずか2戦。以前だったらデゼルは真っ先に見限っていただろう。年明けデビューで重賞経験もなし。前走は前日の未勝利より遅いラップで時計はわずか0秒1上回っただけ。レースの上がりが0秒6上回ったものの、メンバーNo2の上がり時計33秒3が5頭も横並びする中で最速32秒5が際立っているとも思えない。それでも見限れないのが最近のクラシック傾向。しかも"確変中のディープ産駒"だからなおさら軽視できない。数字より余裕十分の勝ちっぷりを強調すべきだろう。残り2ハロンで勝ちを確信。抜群の手応えから軽く追い始めると一瞬にして残り1ハロンで先頭に立った。完全に先頭に立った後に初めてムチを使うという離れ業。まさに教育的なムチで、結局2発だけ使って圧勝したことも心強い。逆手前になったり、内に切れ込んだりした課題をいきなりGⅠで克服できるかどうか。再びこの悪癖露呈で惨敗、驚きの成長力で真っすぐ走って圧勝。どちらの結果もイメージできる。
ミヤマザクラの前走は3角前にアクセルを踏んで一気に前々へ出しに行ったが、直後のブレーキで馬の行く気がそがれた可能性が高い。鞍上はノメったことが原因というが、鞍上のブレーキ直後にリズムが悪くなったことは間違いない。さらに直線ではスペースを探すのに精一杯でまともに追えなかった事実。残り150でようやく初めてムチ。結局ムチ2発を2回だけならば、スタートから最後までまったく競馬をしてないことがわかるだろう。前走の鞍上が自ら切り開いてGⅠ勝ちを制覇するというより、外国人騎手のへぐり待ちという典型的な日本人騎手のイメージが年々強まっていただけに乗り替わりで受ける刺激は大きいはず。二千のレコードホルダーだが、最速上がりの経験はわずか1回だけ、上がり33秒台以下の経験はなし。ハナ切るぐらいの徹底先行だけが勝ち負けを意識できる乗り方だ。
マルターズディオサの前走は先行下手の鞍上に足を引っ張られた。鞍上がブリンカー着用していたようなレシステンシアへのマンマーク。この馬でも5ハロン通過時に先頭から3馬身差、この馬自身の5F通過が約58秒6。勝ち馬はマルターズよりさらに5、6馬身後ろだからいかにこの馬でもハイペースの位置取りだったことがうかがえるだろう。強い逃げ馬を追いかけた先行馬が崩れていった典型的なハイペースの逃げ残り。普通に厳しい流れではなく、超厳しい流れで失速ならばまだまだ巻き返せる感触もチャンスもある。ジュベナイルFとチューリップ賞でがっぷり四つの追い比べで2回連続でクラヴァシュを競り落としてきた実力馬。最速上がり2度の経験、上がり33秒台以下をメンバーNo1となる4度の経験ならば、良馬場でV字復活があっていい。
別路線組ではウインマリリンだけが色気を感じる。鞍上弱化と思われる乗り替わりでも大失態の前走ではこれまでの主戦に大一番を任せられなかっただろう。とにかくまさかの大失態だった。
手応え十分に直線を向いていい感じで加速。残り250で初めてムチを使ったが、その瞬間にムチを落とした。わずかムチ1発だけで勝ち上がったのだから着差以上の強さ、能力差があったということ。勝てたからいいものの、あれで負けていたら自身の黒歴史確定レベルの大ミスだった。
ほぼムチなしで1分58秒台。例年と比べると5ハロン通過58秒6は異常に速く、過去のレースでは5F60秒以下だった10、11、16年でオークス馬券圏内に直結している。14、19年こそ馬券圏外だったが14年だけは4、5着と掲示板確保。年々高速馬場になっているだけに眉唾ものの傾向だが、常識的には前走が本格化への大きなターニングポイント。どうにかラチ沿いで折り合いたい。
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