14⇒2、11⇔2、11、8、7、3 (14点)
年々下がりつつあるマラソンレースへの価値観、年々強まる海外志向とは反比例。同時期に行われるだけに4歳で天皇賞春を勝った馬は、手薄な長距離路線からも再び次の年で連覇する可能性が高まってくる。
今年のメンバーは特に顕著に出た。サンデー系の蔓延も大きな理由だが、三千以上に興味ある厩舎とない厩舎、馬主がはっきりわかれたということ。今年は厩舎2頭出しが実に4組という特異なメンバーになった。
さらにメンバーレベルが高いほど近年の長距離戦は瞬発力勝負になりやすくなっている。ある意味、異次元レベルの超スローだった菊花賞は上がりレースラップに10秒台が含まれるというラスト2ハロンが10秒7-11秒3。最速上がりは5頭の同タイムとなった33秒9にも、今までになかった超スローの菊花賞だった。
昨年の天皇賞春も同じだ。過去を振り返っても記憶にない上がりレースラップ。比較すれば一目瞭然。
過去10年の上がりレースラップ
10年
11秒3-11秒4-11秒5
11年(稍重)
11秒4-12秒1-12秒5
12年
11秒7-12秒3-12秒5
13年
11秒9-11秒8-12秒6
14年
12秒0-11秒1-12秒7
15年
11秒8-11秒5-12秒0
16年
11秒4-11秒7-11秒9
17年
11秒6-11秒7-12秒2
18年
12秒1-11秒4-12秒4
19年
11秒6-11秒0-11秒9
ラスト3F目、2F目が速くなるほどラストのラップがガクッと遅くなるのが常識だが、すべて11秒台でラスト2F目が11秒0というのが異様な数字であることがわかる。
道中のラップからがいかに遅かったか。稍重だった11年を除外すると、スタート直後の1F目を除いて13秒台のあるラップを数えると、
10年2回
17年1回
19年2回
それ以外の年は0回。
過去10年でレースの上がり時計No1、2がそれぞれ10、19年。17年はレコード決着で特例として省けば、ごく普通に13秒台があるかないかだけでレースの質が変わっていくということ。人気馬に瞬発力勝負で挑みたい馬が多数いる中、ハナがほぼ確定しているキセキが終始12秒台のラップを刻めるかどうか。過去の傾向からも13秒台が1つでもあると瞬発力型の餌食になる。
長距離の名手と言われていたのは昔の話。キセキの鞍上にGⅠでの鞍上マジックが近年でみられないだけに極限に近い瞬発力勝負になる可能性は高まる。フィエールマンは昨年の再現のように乗るだけで結果はついてくるか。いずれにしても長距離歓迎のスタミナタイプではないことは間違いない。あくまでスローとなった際で長距離の瞬発力勝負に強いディープ産駒であることをまずは頭に入れとくべき。逆を言えば上がりがかかって時計が求められるレースは未経験で、この流れに持ち込まれた時は無抵抗の惨敗があっても驚かないだろう。
いずれにしても折り合い不問。とにかく長距離で信頼できる名手配置が心強い。菊花賞では1番人気のプラストワンピースが京都で御法度の3角過ぎから外を回って動くという考えられない下手な騎乗。2着エタリオウでさえ、フィエールより2、3頭分外を回ったコースロスがあった中で、直線まで仕掛けを我慢して残り300から一気に加速して差し切った乗り方は他馬が下手すぎるもあるが、脱帽するしかない見事な好騎乗ぶりだった。
昨年の天皇賞春では自信満々の騎乗に変わっていた。前日に日本レコードが出るほどの超高速馬場。3分14秒割れが確実と思われた馬場で3分15秒0の勝ち時計となったのは考えられないほどペースが落ち着いたため。12~16年まで道中13秒台のラップなしに対して昨年は2回13秒台からも遅さが伝わってくる。先週から続く最速上がり32~33秒台が連発する高速馬場。道悪競馬が続いたためなのか、鞍上の意識レベルがこれまで以上に慎重でスローになりやすくなっていることもこの馬にとって後押ししているだろう。ある程度の人気を背負っているキセキの大逃げが考えにくいだけに、どう勝つかが焦点でいい。
正直、なぜキセキの鞍上を前走で元に戻したのかがわからない。とにかく鞍上は長距離下手。古馬の長距離重賞では皆無に近いほど結果を残してないほど落ちぶれているのに、これだけの馬を任せた理由は今でもわからない。GⅠでは牝馬か、短距離に良績集中。古馬二千四以上のGⅠ未勝利がリーディングジョッキーと思えぬ取りこぼしの多さを示している。
いずれにしても前走はスタートでレース終了の大出遅れ。前半は腹をくくって離れた最後方からの待機策で挑むが、掛かって制御不能になると考えられない大マクりに転じた。テン乗りでもないのにまるでルーキーとのコンビのような無様なレースぶりだった。折り合い難からの自滅は馬自身に問題というより鞍上にも問題があったと納得するしかないか。
当然の一発レッドカードで乗り替わりだが、能力そのものはGⅠレベル。長距離では願ってもない条件好転とみていい。以前ようにビュンビュン飛ばしてこそ本領の逃げ馬。ため逃げの瞬発力勝負になるとどんな流れでも分が悪いことはこれまでの実績から証明されている。鞍上が終始12秒台のラップを刻んで後続になし崩しに足を使わせるかがどうか。ひとつでも13秒台になると過去の傾向からこの馬の出番はなくなる可能性は高まっていく。
今年の阪神大賞典は過去10年で勝ち時計No1だった17年サトノダイヤモンドの3分2秒6より遅かったが、18年レインボーラインの3分3秒6より速かったNo2の勝ち時計だけを褒めたい。レースの上がり時計は過去10年(良馬場は8回)でNo6という平凡さ。前走が条件戦で馬券圏内に入ったのが実に10年ぶりなど、勝ち時計以外では数々の低調さがうかがえた。
ユーキャンスマイルはあくまで脇役の立場としてし扱いたい。そもそもここで勝ち負けが計算できるほど成長しているかどうかも疑問が残る。フィエールマンに菊花賞で0秒2差から逆転するほどの成長は感じられないのが本音。15戦して掲示板外はわずか2戦。最速上がりは8回もある瞬発力型だが、ペースを無視して徹底待機から脚を伸ばすことに固執してきただけ。昨年もダイヤモンドSをスローの上がり勝負を最速上がりで制して天皇賞春に挑んだが、結果は勝ち馬に子供扱い。長距離に結果は出ているが、フィエールよりもスタミナがなく、フィエールより劣る瞬発力型としての能力比較は昔も今もそれほど変わっていないのが現状だ。2着馬が条件戦上がり、3着馬は古馬重賞未勝利で典型的なGⅡレベルに届いてない低調重賞。実質GⅢレベルならば、GⅢ2勝馬が前走の完勝も納得できる。以前は右回りで強烈なササり癖が課題だった悪癖馬が大一番でテン乗りにも懸念。ササり出した時点でレースを終える。
阪神大賞典のレースレベルが微妙ならば、日経賞はもっと深刻なレベルの低さ。過去10年で稍、重、阪神開催などを除外すると実質6回分。勝ち時計No4、レースの上がり時計は稍、重も含めてワースト2となる最悪に近い数字がレースレベルの低さを物語っている。いずれにしてもミッキースワローに光がみえてこない。まともに立ち回ること、最後まで真剣に追うことなどがかなり多くなってきた鞍上に嫌気が出ている。前々走は馬場を見極めきれず勝負どころで4、5頭分も余計に外を回ったのが最大の敗因。ごく普通に立ち回れば馬券圏内確実という0秒6差だった。そもそも鞍上に三千二でも耐えられる腕力、体力があるかどうかも最近の追い方から微妙だろう。"人馬"ともにスタミナ不足が懸念される中、過剰人気が否めない。
最強の1勝馬という響きは久々に聞くが、エタリオウが輝ける舞台は唯一、勝ち鞍のある京都しかない。結局、重賞で好走を導いた鞍上を降ろしたことがこの馬の転落の始まりだった。追わせる馬に追えない鞍上配置だった4走前から前々走はあくまで最悪なコンビだったと割り切るしかない。ブリンカー効果が薄れて若干V字回復のイメージは薄れてきたが、それでも菊花賞でフィエールに同タイム2着。勝ち馬を上回った最速上がりには堂々と胸を張れる。さらに昨年の天皇賞春は上がりNo3で3着と同タイムならば、人気の低さに違和感を感じるはず。人馬ともに失うものが何もないという立場となれば、以前の徹底待機策に戻して直線勝負に賭けるべき。
主戦からようやく乗り替わって呪縛から逃れられたメイショウテンゲンは前走で期待したが、同じような乗り方をされて同じような結果となっている。外を回っては打つ手のないジリにもかかわらず、勝負どころで勝ち馬より2、3頭分も外を回れば策がなく、3角前後から仕掛ける乗り方で届かないことはこれまでもこれからも同じということ。この馬としてはある程度好位で折り合って内々か、離れた後方の位置取りでも直線まで我慢するか、2つに一つしか選択肢はない。テン乗りの鞍上が理解しているかどうかがすべてのカギを握る。
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