2⇒6、10、9、4⇒6、10、9、4、8、5 (20点)
3歳馬VS古馬、2歳世代が好調なハーツの復権など色々な視点からも面白い頂上決戦になったが、中でもカナロア産駒VSディープ産駒の激突に一番興味がわく。産駒の特長も傾向もどこか似てる。どちらもスピードと瞬発力を兼ね備えて総体的には距離の限界が見え隠れしているが、好調期の長短に若干のズレがある。
ディープインパクトが種牡馬的に大成功を収めたのはあくまで金銭面だけ。実績面では父サンデーサイレンスを越えることはできなかった。
産駒が重賞勝ちした200勝のうち、二千以上、牡馬混合でいわゆる古馬の王道GⅠ勝ちを何勝したか? この答えがすべてを物語っている。毎週馬券を買い続けている人でも勘違いする結果とイメージの落差。恐ろしいもので、だいたいが200勝中の2、3割は勝っていると思っている。
ところがだ。
フィエールマンの天皇賞春
ジェンティルドンナの有馬記念、ジャパンC2勝
サトノダイヤモンドの有馬記念
アルアインの大阪杯
ショウナンパンドラのジャパンC
スピルバーグの天皇賞秋
海外GⅠ馬のエイシンヒカリを除けば、たった8勝。そのうち牝馬を除くと4勝のみになってしまう。
セレクトセールの盛り上がりはクラシック専用種牡馬としての評価。好調期が短いのは本質なのか、人為的かは微妙だが、いずれにしても牡馬に関してはダービー以降の活躍がごく稀な傾向も父サンデーを超えられない要因になっている。
フィエールマンは春のクラシック時に眠ったままだったからこそ古馬で覚醒した可能性が高い。
ダービー馬のロジャーバローズ、ディープブリランテが早期リタイア。ワグネリアン、マカヒキは不振というよりすでに天井。キズナさえも古馬になってからGⅠ勝ちがなかったことからも昔のようなダービー馬の威厳が失われて、ディープ産駒のダービー馬は早枯れのイメージをますます強めている。
結論はこれだけの豪華メンバーで牝馬不在のディープ産駒は厳しいレースになるということ。瞬発力という武器がなく、これまで一進一退が続くダノンプレミアムにもアーモンドに競り勝つようなイメージが浮かばないのは当然か。とにかく本格化したカナロア産駒は脅威しかない。迷いなくアーモンドアイ中心でいいだろう。
カナロア産駒はイメージ以上に偏重傾向にある。3世代だけとはいえ、芝の二千以上はわずか18勝。新馬、未勝利を除くと10勝。古馬3勝クラス以上に絞ると6勝で、すべてはアーモンドとサートゥルに限られていく。二千四以上のGⅠはアーモンド1頭だけ。
ディープ産駒の牡馬がなかなか二千以上の古馬GⅠを勝てず、苦戦している中でジェンティルドンナだけが二千四以上の古馬GⅠを勝ちまくっていたことがカナロア産駒でもおきそうだ。ジェンティル同様にアーモンドの無双状態はしばらく続くだろう。
ディープ産駒に怖さがなくなれば、アーモンドアイの輝きはここで戻る。とにかく3歳馬サートゥルとは別次元になるワールドクラスの実績。連勝中とはいえ、牡馬相手の二千四に半信半疑だったジャパンCのレコード勝ちで現役最強というより、過去の歴史的名馬以上を証明している。踏ん張った2着キセキも最後バタバタになる死闘を3着馬に0秒9差。超一流馬の集まったGⅠでは異例中の異例で、素直に規格外の時計を評価できる。
前々走はハナを切った馬が大逃げとなって各馬がじっくり脚をためて追いかける展開。4角は持ったまま、まったく仕掛けずに残り300で先頭から追い始めても手応えほど弾けなかったが着差以上の完勝だった。
前走は意外な参戦。もちろん、本質がマイル対応可能な絶対スピード。それでも中~長距離をこなしてきただけに置かれることが心配だったが、結果はスタート直後の不利で後方から。レース終了になるような不利ではなかったが、外差しが効かない馬場では手も足も出ない流れだったことは間違いない。ロスなく立ち回って最後は勝ち馬を軽く上回る最速上がり。ゴール直後、2着に浮上するような脚余しなら今後のマイル戦にはメドを立てた。
前走の負けはここでの好走イメージもしやすくさせた。仮に出負け気味のスタートで内々に閉じ込められても異次元レベルの瞬発力でカバー。少なくても国内GⅠをなかなか勝てないディープ産駒に競り負けることはない。さらに前走以上にゆったり立ち回れる距離ならば好機に動くことも可能。いずれにしても前日にレコード馬場にまで回復した超高速馬場は願ってもない好条件。取りこぼしの確率はますます低くなった。
やはり相手は同じカナロア産駒サートゥルナーリアか。確かに3歳馬の苦戦は周知の事実。
過去30年で3着以内の3歳馬は
14年3着イスラボニータ
12年2着フェノーメノ
10年2着ペルーサ
08年3着ディープスカイ
06年3着アドマイヤムーン
04年2着ダンスインザムード
02年1着シンボリクリスエス
96年1着バブルガムフェロー
95年2着ジェニュイン
天皇賞秋が二千に定着したのが84年ミスターシービーが勝った年からだが、その4年後に3歳馬オグリキャップが2着。あれから30年近くたっても3歳馬と古馬の壁の高さは変わらず。
10年単位で考えると昔より3歳馬の活躍は目立ってきたが、それでも17年間、3歳馬の勝ち馬なしが現実。世代重賞を馬なりで勝とうがレベルの違いは明らかで古馬GⅠの壁はなかなか崩せない。
サートゥルナーリアの前走はギリギリ折り合うような行きっぷりの良さで3角過ぎから徐々に動いて直線入口で早くも先頭。他馬が追いどおしの中で仕掛けを我慢。1頭だけ涼しい顔で軽く仕掛けただけで残り1ハロンでは後ろを確認する余裕もあった横綱相撲の楽勝だった。終始軽く手を動かす程度の仕掛けで残り50から完全に流すような圧勝劇が世代重賞とはいえGⅡだから恐れ入る。子供扱いにした馬が菊花賞3着馬でそれなりの相手、レースレベルだったということも間違いなく、このパフォーマンスを二千四で示したことが何よりの収穫だろう。春当時は長距離に良績のないカナロア産駒でスタミナ不安もあったが、重賞でこれだけの内容ならば春よりふた回り以上の成長があると確信している。いずれにしてもポカのあったダービーとは違って不安どころか、距離ベストをにおわせる二千。残り4ハロンから加速する上がりレースラップだった皐月賞で最速上がり。2歳戦以来だった厳しいローテを考慮すれば、ひと叩きで挑めるここは皐月賞以上の状態と結果が期待できるか。ここでの斤量差は大きな利点。
前走は入口で先頭に並びかけていい感じだったが、結局前を捕まえきれず。両前落鉄という考えられないアクシデントのあったワグネリアンだが、何かが噛み合わないというイメージをますます強めてきた。そもそも乗り方そのものがどこかちぐはぐ。ディープ産駒の特長的なケタ違いの瞬発力で勝ち上がってきたが、瞬発力をある程度犠牲にして流れにうまく乗る好位差しで固める志向がひとつの疑問。勝ち馬より上がり時計が上回った前々走も乗り方ひとつで逆転できたということが示されているのにだ。休み明け(311100)からも示されている初戦こそが狙い目の仕上がり早。ダービーと東スポで東京(200000)。早めにレースを捨てた7着の皐月賞を除けば完璧に近い二千(111101)。ローテ、コースに確かな距離実績が加われば、打倒アーモンドとしては申し分ないが、もうワンパンチ足りない頼りなさを乗り方で埋められるかどうか。新鮮味のないコンビがどうにもネック。
ダノンプレミアムは通算(600002)で掲示板外の2戦が大一番のダービーと安田記念という勝負弱さ。ダービーは休み明け、安田記念は叩き3戦目で挑むローテの悪さがまずはひとつの敗因として挙がるが、そもそも馬というより陣営の勝負弱さ、勝負勘の鈍さが否めなくなっているのも事実。
管理馬
ミッキーチャームは3連勝で挑んだ秋華賞は休み明け2着。
パクスアメリカーナは4番人気のNHKマイルCで6着。
ヴェロックスは叩き3戦目で挑んだ皐月賞2着、続くダービー3着、菊花賞3着。
極めつけはダノンファンタジーか。4連勝で挑んだ桜花賞4着、オークス5着。ローズS1着で秋華賞8着。
とにかく大一番に弱い。今年も重賞7勝しているにもかかわらず、3歳以上のGⅠは開業以来、いまだ未勝利が現実。以前は王道路線を嫌って特異なローテでGⅠを狙ってきたが、今は王道路線でも勝てない。外厩頼り特有の1戦必殺傾向がとりわけ強いだけに、逆に言えば前走の惨敗のダノンは今回こそが理想的なローテなのかもしれない。
休み明け(400001)、二千(200000)。東京(100002)は休み明けは走らないダービーとスタート直後に致命的な不利を受けた前走ならば、レコード勝ちしたサウジアラビアRC勝ちの重みだけで十分だろう。ここで見せ場もない惨敗ならば前2走のマイルを挑戦させた陣営に恨み節。これだけの馬を一貫性のないローテで自滅させたと断罪すべき。鞍上のGⅠ勝てない病にも終止符を打ちたい。
乗り役のうまさが問われるスワーヴリチャードが致命的な乗り替わりで一気のトーンダウン。気を抜くと置かれるだけ置かれて瞬発力不足から好機のマクりが好走パターンという癖馬。すでに下り坂の鞍上では4角前に早々にレースをあきらめることも可能性としては低くないだろう。5走前の昨年の天皇賞秋ではスタートで致命的な大出遅れで置かれるだけ置かれた。3、4走前は一変して掛かり気味。前々走は直線だけの競馬で特筆するような末脚もなく3着。前走も軽く行きたがっていたが、勝負どころの平凡な行きっぷりからはメンバーNo2の上がり時計でわずかながら復活のきっかけを作っている。スタートと折り合いに爆弾を抱える癖馬としてイメージに合わない初コンビ。二千(310002)、東京(222001)、休み明け(302102)。距離もコースもローテも走る条件が揃って見せ場もなければ乗り替わりが裏目に出たとして納得するしかない。
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