展開の紛れがあった阪神千八と違って大井外二千は力勝負。ここを勝った馬が現時点のダートで一番強い馬といえるだろう。重賞初挑戦のブルーホークがわざわざ玉砕覚悟でハナを切るとは思えず、ハナにこだわりのないフリオーソもじっくり相手なりの位置取りか。毎回のように3角すぎからロングスパートをかけるJRA騎手なら、後半はかなり厳しい消耗戦となる。
ヴァーミリアンの前走は鞍上の消極さが大きな敗因となった。1角のアクシデントはまったくいいわけにならない。明らかに決め打ちの乗り方。たとえハイペースとしてもあの位置取りからひとマクりで勝ち切るのは至難の業だっただろう。結局、向正から一気に仕掛けるチグハグなマクり競馬で、早仕掛けとなって直後にいたメイショウトウコンにも交わされてしまった。絶対的な存在だったダート戦で後ろから差される失態は、懸念していたJRA馬場の時計勝負に弱さがある可能性をますます高めた。
誤算があったのは乗り役だけではない。十分な追い切りを消化して12`増にも驚いた。見た目に太め感はなくても、嫌な数字だったことは間違いない。鞍上がへぐりまくった一過性のポカと確信しているが、武豊騎手も骨折から完治とはほど遠い現状で、乗り替わりにプラスがなくなった。JRAで先週と土曜は右ムチを使わず。有馬記念でようやく使ったが、見せムチ程度の使用に体調の悪さがうかがえた。楽な追い方で勝てるような相手ではないだけに、ますます窮地に立たされる。いずれにしてもパワー重視の馬場、サバイバルになりやすい大井外コースだけが頼り。
カネヒキリの前走は鞍上の好プレーに脱帽。いつのまにか4角では逃げ馬の直後の絶好位。抜け出すまでが速く、そこから並ばれてもうひと伸びした渋太さが王者の完全復活を示す強さだろう。3年ぶりのGT美酒は不治の病からの復活だけに計り知れない重みがある。当時はヴァーミリアンでも太刀打ちできなかった能力と実績を兼ね備えている無敵の存在だった。
それでもいぜん足元がモヤついている現状で取捨か難しくなっていることは確か。土曜には同厩舎で同じ屈腱炎から復活したフラムドパシオンが、レース中に右前浅屈腱不全断裂。やはり屈腱炎明けの難しさを再認識させた。だましだましの仕上げから渾身のレースを消化した直後でどうしても強気になれない。
サクセスブロッケンの前走惨敗は意外だった。遅くないペースとしても、直線入り口でギブアップになるようなハイペースでもなかったことは事実。ペースオンチの外国馬が2角すぎに急激に控えたことで、ハナへ立ったことがリズムの狂い始めだった。もとより燃えやすい気性の若駒にとって、2角過ぎにハナという予想外の流れが、数字以上に厳しかったということ。ある程度、行く馬とペースが計算できる大井二千に戻れば、前走のような無様なレースになることは考えにくい。さらに心強い名手とのコンビ。すでに結果を残している大井二千となれば、改めて前々走までの強さを見直せる。
不安点があるとすれば、この少頭数で差し競馬予告。逃げにこだわらないフリオーソとブルーホーク。極端に流れが速くならないことがわかっていて、控える競馬に何のメリットがあるのか。チームオーダーが出て本当に実行すれば、掲示板も危うくなる。大一番での変化だけは避けるべき。
ボンネビルレコードも絶好の舞台となれば脅威の存在になる。JRA馬場ではまったく走らない元大井所属のパワー型。さらに初コースに実績がないマイナス条件が加われば、前走の結果は当然といえば当然。JRAにトレード後は的場文騎手とのコンビで帝王賞、ダイオライト記念、かしわ記念、帝王賞、日本テレビ盃で1、2、1、2、1着。大井在籍時以上に凄みを感じさせる差し脚は、まだまだ衰えはない。フリオーソの逃げに早め早めのヴァーミリアン、カネヒキリ。JRA騎手は外二千で禁じ手の3角すぎからのスパート。乱ペースになりやすいレースでますます色気づく。馬体が細く映るほど走る傾向。
フリオーソは久しぶりの大井コースで正念場を迎えた。意外なほど手応え悪化が早かった前々走を現状の能力基準とすれば、いよいよ下り坂の入り口にかかっていることが否めない。以前のような掛かり気味の折り合いで、押し切るような豪快さがここ3戦でみられないのが現実。これまでにない不振時期の長さが破格の持ち時計でも狙えないひとつの要因となっている。500`台が理想的な馬体。サクセスが差し競馬の予告が唯一の光で、前半はペースを落として後半にハイラップを刻むような以前の逃げを期待したい。
ブルーコンコルドは見た目からも衰えを感じる。太めを脱せない前走はますますマイラー向きの体型になっていた。初登場だった2年前の東京大賞典以外は、その後、大井3戦して入着ラインで精一杯のレースからも変わり身が期待できない。
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