8⇒11、1⇒11、1、14、9 (6点)
8、11-1、14、9、3、13
8⇒11、1、14、9 11⇒1、14
初志貫徹。結論から言えばアーモンドアイの負け試合として話を進めたい。メンバーレベルは例年以上に低く、これだけ手薄になればますますアーモンドの人気が集中して圧勝しても驚かないが、惨敗しても納得できる条件が揃っている。ほぼモマれたことのない3歳牝馬が最内枠を引けば、一旦最後方まで下げることが避けられず、ますます厳しいレース。数々の試練だけが待ち受けているということ。
1・とにかく時計云々は別にしてこれまで楽な勝ち方ばかりだった。"騎手=調教師"特有の試走含みのデビュー戦は出遅れ。馬群から追走とはいえ、捌きやすくガラガラの馬群から。キャリア2戦目以降は徹底して馬群の外々を立ち回るコース取りで、まったくモマれてこなかった。瞬発力頼りにほとんどが直線だけの競馬で差し切っている。
2・血統的な距離の壁はどうにも避けられない。カナロア産駒で二千以上を勝ち上がったJRAの馬はアーモンドアイ、サトノウィザード、ヘブンリーデイズ、アールスターだけ。2世代ですでに100勝以上の勝ち鞍もあるエリート種牡馬が二千以上に限るとたった4頭しかいないことにはっきりと距離の限界が示されている。しかもアーモンド以外の3頭の勝ち鞍は新馬か、未勝利という最下級レベル。現実にオークスは5ハロン60秒を切るハイペースにもかかわらず、行きたがる仕草が出ていた。
3・超高速馬場だったオークスで叩き出した数字の時計や瞬発力は全幅の信頼を置けない。マイラーでも好走可能なオークスは毎年眉唾ものとして割り切るべきだからだ。
キャリアすべてのレースで最速上がりという圧倒的な瞬発力で勝ち上がってきたが、牡馬相手になると微妙になってくる。超低調な数字が揃ったダービーより0秒2劣った勝ち時計。さらに同日1000万より0秒7劣り、前日の3歳500万よりわずか0秒8しか上回らなかったことが物足りなさを増幅させている。
この馬にディープインパクト級のスケールがあれば4角大外ブン回しても届くが、ジャパンCの過去の歴史から勝ち馬は4角である程度の位置取りが求められている。いつもより早めの仕掛けと前々の位置取りでどこまで自分のポテンシャルを最大限出せるか。まったくの未知数。
4・過去20年で馬券圏内の60頭中、前3走以内に千六以下があったのは6頭。
98年1着
エルコンドルパサーの3走前
ニュージーランドT1着(当時千四)
99年2着
インディジェナスの前走
外国競馬出走(千) 前々走と3走前はいずれも二千四
02年2着(中山開催)
サラファンの前走
外国競馬出走(千三) 前々走と3走前はいずれも二千
08年3着
ウオッカの3走前
安田記念1着
09年1着
ウオッカの3走前
安田記念1着
10年2着
ブエナビスタの3走前
ヴィクトリアM1着
11年1着
ブエナビスタの3走前
ヴィクトリアM2着
14年2着
ジャスタウェイの前々走
安田記念1着
外国馬の2頭は特例として省けば、残り4頭から傾向が探れる。
3歳馬は化け物的な強さだったエルコンドルパサーだけ。その他すべて4歳以上だった。ウオッカ、ブエナビスタでさえ、初のジャパンCの4歳時はそれぞれ3、2着。どちらも翌年の5歳時に制している。
3、4歳時にジャパンCを連覇したジェンティルドンナを物差しにするとアーモンドのスケールダウンが否めなくなる。
アーモンドアイ
キャリア6戦(510000)
桜花賞1着⇒オークス1着⇒秋華賞1着
オークスはダービーを下回る時計
ジェンティルドンナ
キャリア8戦(610100)
オークス1着⇒ローズS1着⇒秋華賞1着
オークスはダービーを上回る時計
アーモンドは切れ味頼りだが、ジェンティルは瞬発力頼りでなく、パワーも兼ね備えて逞しいというイメージ。折り合い難を露呈することもなく、レースセンスの良さで連勝を決めていた。アーモンドはやはりスピード身上の瞬発力型。ローズSを使った使わないという差はかなり大きいだろう。楽な競馬続きでジェンティルより少ないキャリアは経験不足が致命傷になる懸念。
キセキの成長力は群を抜いている。少なくても古馬の中では4歳世代が現役最強。その中でトップレベルの戦績を残して、下降気味の5歳以上の馬とは勢いに雲泥の差で状況曲線を描いている。前走は見事なペース配分だった。1ハロン目が12秒台でラスト1ハロン以外はすべて11秒台以下。瞬発力勝負に課題を残すルーラー産駒にとって対ディープ産駒、対キンカメ産駒に対抗するには最高の乗り方だったことは言うまでもない。
5ハロン通過はスローでも後半、徐々にペースアップして直線入口から坂までが10秒台のラップ。ラスト12秒0を踏ん張れなかったものの、勝ち馬と2着馬は別格の瞬発力。4、5着馬とは同じ脚色ならば納得の3着ということになる。前2走はいずれもメンバーNo8になる上がり時計に強調材料がなくても、得意でもない距離で極限の時計勝負をクリアしたことが最大の収穫だった。馬体からうかがえる自身のピーク感。いいタイミングで理想的な距離延長ならば、低く見積もってもこれまでどおりの走りは期待できる。
スワーヴリチャードの前走は一過性のポカ。スタートで出遅れてマカヒキにぶつけられてレースは終わった。3角で先頭から12、3馬身差。しかも後方で掛かり気味。腹をくくったのか、あきらめたのか。どちらにしても直線まで仕掛けを我慢したことは大マクりの飛び道具もある変幻自在の馬にとっては珍しいこと。直線では残り250からムチどころか、まったく追わずに馬なりでレースを終えている。ギブアップの位置取りからもがいてダメージを食らう1億5000万円のレースより、心身ともにフレッシュな状態で3億円の次走を完全燃焼と考えるのが鞍上の性。レースを早めに捨てたことは当然の行いだったと割り切るしかない。大事な1戦を試走に徹して経験レースを1つ失ったことがどう響くか。時計勝負と瞬発力勝負には確かな裏付けがなく、目の前の賞金ほしさにマイルを使ってリズムを崩しかけているだけにGⅠ馬という威厳はまったく感じられなくなっている。
単純な瞬発力、上がり時計はメンバーNo9。二千四限定の上がり時計はNo7で二千四の持ち時計はNo10。ダービーも大阪杯も超スローだからこそ、大マクりが可能な流れだっただけで、単純に時計だけが求められる流れでは無抵抗に終わる可能性が高い。ごく普通のラップではマクることもできず完全不発か。オグリキャップは突然のマイル挑戦からリズムが崩れて最後に大駆けを決めたが、この馬はどこで立ち直るか。リズムを取り戻すには相当な試練がある。
シュヴァルグランは昨年のこのレースで燃え尽きたと考えたい。昨年も1年以上勝ち鞍のなかった勝負弱さからの栄冠。相手や流れや位置取りなどすべてにおいてこの馬向きになった一世一代のフロック駆けの評価で落ち着く。上がり33秒台がわずか3度だけで瞬発力勝負に課題を残していたが、高速馬場の時計勝負となって瞬発力より長くいい脚を使えるというある程度のスタミナが求められたことが勝因となったか。得意な距離で競り負けた天皇賞春がピークから下降を示す象徴的な例だったと評価を固めると一変はますます考えにくい。名手でも日本人騎手でもどんな鞍上が配置されても、ある程度の瞬発力、時計が求められる今開催の馬場では無抵抗のレースぶりが簡単に想像できる。
サトノダイヤモンドはシュヴァルより深刻なスランプ。というよりはすでに上昇不可能な低迷期に入ったか。1度落ち込んだディープ産駒はV字回復の確率が年齢的にもますます厳しくなる。過去の傾向からすでに以前の輝きは戻らないと感じている。前走は着順を度外視すると超低レベル。4角前は12秒台にもかかわらず、手が動き始める行きっぷりの悪さ。残り300で先頭に立ったが、そこから伸びない瞬発力に衰えを感じさせた。何より条件上がりの牝馬に最後詰め寄られたことが決定的な不甲斐なさ。GⅠ馬ならば最後のラップが11秒前半が及第点にもかかわらず、11秒8が今の低調な実情が表れているだろう。実質ラスト2ハロンだけの競馬に何の強調点も浮かばない。すでに完全に成長が止まっている3着アルバートと4角の差がそのまま。引き離せなかったことが覇気のなくなったディープ産駒そのものの特徴。
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