7⇒9、11⇔9、11、3、4、5 (16点)
15年にジャパンC、16年に有馬記念の1着賞金が3億円になって天皇賞秋の潮目が完全に変わった。16年からは完全に各馬が先を見据えた"実質叩き台"。以前までひと叩き後が王道ステップだった格式あるGⅠが様変わりして、少なくてもここを全力100%で挑む馬は有力馬にいなくなっただろう。
休み明けでない馬が天皇賞秋で馬券圏内になったのは16年以降は16年3着ステファノス、18年3着キセキ、19年3着アエロリット(16年1着モーリス、18年2着サングレーザー、22年2着パンサラッサは8月以来)を含めてもマイラー、または逃げ馬に限られていることも新たな傾向として頭に入れときたい。
==休み明けで天皇賞秋を勝った馬も次走、2走後にそれなりのダメージ==
16年モーリスは香港GⅠで1着
17年キタサンブラックはジャパンC3着⇒有馬記念1着で引退
18年レイデオロは最近で唯一、順調に使われていたローテ。有馬記念は取りこぼし2着。
19年アーモンドアイは有馬記念9着(キャリア唯一の馬券圏外)後に休養。
20年アーモンドアイはジャパンC1着で引退
21年エフフォーリアは有馬記念1着後に休養もスランプ突入。
22年イクイノックスは有馬記念1着後に休養してドバイ1着⇒宝塚記念1着。
天皇賞秋が二千になった84年から最少頭数。ジャパンCで外国馬を呼び込むための賞金加算が色々なレースで弊害が出ている象徴的な出来事ということ。スローになっても意外に逃げ切りが難しい天皇賞ではさらに瞬発力が求められる頭数になったか。
世界レベルの重鎮2頭は揺るがない存在。二千が限界で次走ジャパンC、有馬記念よりこのレースでタイトルの欲しいプログノーシス、ジャックドールと脇役候補のダノンベルーガがどこまで抵抗できるかの計算になる。
少数精鋭のこの相手でもイクイノックスの視界は良好だ。クラシック無冠が糧となってここまですでにGⅠ4連勝中。とりわけ世界に存在を知らしめた前々走のレコード勝ちは物凄い衝撃度だった。まさかのハナから世界強豪相手に影を踏ませぬ圧勝劇。必要以上に置かれ続けてきた不器用さなどどこ吹く風で、まさにつかみどころのないキタサンブラック産駒の意外性が前面に出た内容だった。
上がりNo8で不発に終わった皐月賞でも2着。その他、前々走を除けばすべて上がりNo1、2の瞬発型にとって絶好の高速馬場で輝きを失うことはない。昨年の天皇賞秋で上がりNo3より0秒5も速かった最速上がりがまさにこの馬の真髄。4走前は残り5ハロンから、3走前は4ハロンから11秒台突入のロングスパートを制して、前走はラスト2ハロンが加速するラップで連勝して無双状態に突入している。人馬ともに展開に左右されないレースセンスを兼ね備えている裏付けを得て、ここも変幻自在な立ち回りでスピードと瞬発力で圧倒する。
これまで1勝1敗のイクイノックスとドウデュースが3度目の対戦。一見してがっぶり四つのような戦績でも、個々の数字は断然イクイが上回っている。一番の悲観材料はこの馬のGⅠ二冠はダービーと朝日杯でいずれも世代別レース。その中のひとつがダービーならば胸を張れるが二千、千八持ち時計がそれぞれNo10、8。単純な上がり時計比較でNo8、二千限定の上がり時計No7という標準以下のランキングにダービー馬の威厳が薄らいでいく。
少なくても二千でイクイに勝ち越す姿が計算上もイメージ的にも難しくなったことが否めない。もとよりマイラー色の強いスピード型。突然、距離に壁ができることは考えにくいが、それでも距離適性もイクイ優勢だけに強調材料を見出すことは難しいだろう。単なる海外旅行のような超長距離輸送直後のレースでとにかく気配優先。惨敗しても驚かないほど最悪ローテになっていることは間違いない。
プログノーシスは今回がJRAで初のGⅠ挑戦になることより初の東京に驚き。エリート路線でなく、裏街道でこの地位まで作り上げた異色のディープ産駒ということの象徴ということか。東京の高速馬場で極限のスピードと瞬発力に耐えられるかが焦点だが、千八持ち時計No1で最速上がりの回数はメンバー最多の計8回。なるほどキャリア2戦目と計測不能な外国競馬を除けばすべて最速上がりとなる瞬発力には絶対的な自信。陰るどころか、ますます磨きのかかった5歳馬にとって充実期を迎えたと同時にJRAのGⅠ初挑戦は絶好のタイミングということ。現役最強馬に胸を借りて力試し。
2頭の相手はダノンベルーガか、プログノーシスかに絞ればさすがにダノン優勢は考えにくい。大事に使いすぎなのか、使えないのかは別にして圧倒的な経験不足。たかが2勝馬。3歳2月から勝ち鞍なしの現状に加えて、致命的なズブさが足を引っ張って素直に持ち時計を額面どおりに受け取れなくなっている。3走前は直線でスムーズに捌けず、前走は勝ちに行くために仕方なしの強引マクり。いずれも上がりNo6という不発に近い内容はある程度割り引けても、昨年5ハロン57秒4より今年は確実に遅くなるペース。昨年以上の結果、特に瞬発力を求めるのはあまりにも酷だろう。ためるほど切れる反面、少しでも自ら動くと鋭さ半減の瞬発力は今や諸刃の剣状態。次を見据えた競馬か、騎手も陣営も含めた手探り状態になることが濃厚。
ジャックドールはすでに時計勝負も瞬発力勝負も限界が近づいてきたモーリス産駒。何より大阪杯勝ちは超低調内容だったと言わざるを得ない。同日古馬1勝で二千1分59秒0が出た超高速馬場にもかかわらず、わずか1秒6しか上回らなかった1分57秒4。上がり35秒3で振り切れたのがメンバーやレースレベルの低さを示す決定的な数字だ。約1年に1回の割合で上がり33秒台を叩き出しているのは高速馬場の超スローか、スローになる流れ待ちということがはっきりわかるだろう。昨年の天皇賞秋も久しぶりの33秒台だったが、最速上がりより0秒8も遅い上がりNo8。着差0秒3差以上に完敗を感じさせたレースだった。二千(820122)は直近の3戦で2回の掲示板外にも年齢的な衰えが表れてくれば、久しぶりのコンビ誕生は何の刺激にもならない。とにかく自分のスタイルに徹して完全燃焼。ハナを切る選択しかなくなった。
|