10→3、6、11、8、4
ゴールドシップの不発は盲点だった。鮮やかな勝ちっぷりとなった前々走から一転。向正から行きっぷりの怪しくなるもがきっぷりはGⅠ3勝馬と思えぬ姿だった。結局、スタート直後からまったく動かず、決まって後方に置かれる不器用さがレベルの高いGⅠで致命傷になったということだろう。
明確な敗因は距離か、速すぎる前走時計の反動か、京都でご法度の3角過ぎから動く仕掛けか、ハイペースでマクれない流れか。いずれかが引き金となって不発に終わったことは間違いない。決定的なことをつかめない現状だが、上がりが速くて勝ち時計も速い決着が敗因と結論づけると一過性のポカになる可能性が高まる。
向正ですでに敗戦覚悟の行きっぷりの悪さ、4角ではアラアラの手ごたえ。直線半ばまでいい脚を使えなかったが、一番外へ出して前がクリアになると一瞬だけエンジン点火。大惨敗覚悟から少しでも巻き返せたことがせめてもの救いとなった。
マクりが不発というより、いつもよりラップが速すぎたため動けなかっただけ。いい脚を長く使うパワー型の差し馬は瞬発力を求められる時計決着のGⅠでひとまず限界を示した。それでも勝ち負けパターンを見極めれば王者は簡単に軌道修正が可能になる計算が成り立つ。
上がり時計レースラップから探ると、
皐月賞
127-136-121
ダービー
117-120-124
神戸新聞杯
117-116-125
菊花賞
119-118-124
有馬記念
121-119-120
阪神大賞典
121-123-130
天皇賞春
119-118-126
上がりラップに11秒台が含まれるレースで全体の時計が速いと取りこぼす傾向が出ている。菊花賞を例外とすれば、過去の長い歴史の中でNo3の勝ち時計だったのがダービー。レコードに0秒8差で過去20年のNo4の勝ち時計だった天皇賞春も不発に終われば、的外れな視点ではないだろう。
有馬記念は過去10年でNo4の時計、神戸新聞杯は二千四になって日が浅く、過去5年でNo3だから、11秒台が含まれる上がり時計でも太刀打ちできたということ。上がりに11秒台が含まれないレースは皐月賞、阪神大賞典の2戦2勝。速い時計決着にならなければ、上がりに11秒台が含まれる瞬発力勝負でも対応可能で、負けパターンは時計も上がりも速い決着時に限るということ。メンバー的に今回は負けパターンになる確率が相当低くなる。距離もコースも流れも王者復権の舞台としては文句なし。
ジェンティルドンナの前走は負けて強し。偉大さを改めて証明できた。いくらか外を立ち回って掛かり気味になったとはいえ、敗因にはならない程度。十分な手ごたえから追い出して残り1ハロンで並びかけて、勝ち馬に突き放された力負け。さらにゴール前で失速する姿は日本ではイメージできないが、心身ともに大きく成長してワールドクラスを示したことは明らかな内容だった。結局ヴィルシーナに接戦の連続は超スローを必要以上に控えて自ら厳しいレースに持っていったためで、前残り当然のラップは数字からもはっきり出ている。タイレコードで突き抜けたオークスの着差こそが、世代の中の位置づけだろう。
現役最強馬はすでにジャパンCで証明済み。相手の鞍上の甘さがそのまま結果につながったとはいえ、過去20年でNo4の勝ち時計はそのまま能力として額面どおりに受け取れる。スタート直後から驚きの仕掛けで好位をきっちりキープ。直線の追い比べではオルフェーヴルに外からふたをされたが、そこを無理やりこじ開けて振り切っている。そこには馬の力プラス鞍上の力も加わった。ぶつけられてパニックになったのはオルフェではなく、鞍上だったということ。結局ムチを使わなかったというより、使えなくなってオルフェはひと伸びがなかった。鞍上比較では明らかに資質の差。勝負への執念、勝負に貪欲だった鞍上の気迫がジェンティルを勝利へ導いている。
とにかく今までどおりの能力を引き出せば、古馬重賞の経験が浅い4歳勢には負けないが、唯一引っかかるのがディープインパクト産駒ということ。一瞬にして上り詰めて短い期間で散っていく産駒の特徴から、もうすでにゆっくり下り坂となっても驚かない。走るディープ産駒はどこか非力に映る中で異色の迫力十分の好馬体、二千以下で良績集中の産駒としては異例の出世を信頼すべきなのか。いずれにしても2、3歳であれだけ活躍しているディープ産駒でも、古馬になっても活躍している馬は稀ということを忘れてはならない。
フェノーメノの評価は前走で固まった。陣営が英断した菊花賞回避が引っかかり、評価を下げた前走で見事なまでのいい裏切り。好時計を正攻法から横綱相撲で押し切れば、菊花賞回避は間違いなく調教師の選択ミスだったということ。あの強さなら菊花賞出走なら勝っていた可能性がますます高まっている。ジャパンC、日経賞を経験しただけで、いきなりスタミナ強化したものではなく、生まれつきの潜在能力。前3走でステイヤーとして素質開花したことは言うまでもない。
今後は直線での悪癖をどこまで矯正するかに絞られた。右でも左回りでもなぜか急激に内に切れ込む悪癖。ゴール直前でヨレなければ、ダービーは勝っていたほどで、レースレベルが上がって僅差になればなるほど致命傷になる可能性は高まっていく。前走も4角先頭で内側に馬がいなかったからいいものの、追い出すと急激にラチにモタれた。4角先頭、他馬に迷惑にならない積極策がこの馬の勝ちパターンとして確立すれば、乗り方に迷いはない。とにかく4角先頭が絶対的な条件。内側に馬がいれば、前走のような伸びは望み薄。ムチを使ってフラフラになったジャパンCがまさに負けパターンでジェンティル、ゴールドを意識しすぎず、勝負どころでイメージどおりにマクれるかどうかが勝負の分かれ道になる。
ジェンティルに続いてようやく古馬になって活躍できるディープ産駒誕生。トーセンラーは乗り方がますます難しくなってきたが、イメージ以上の地力強化で3強崩しの筆頭として注目したい。とにかく天皇賞春の好走は意外だった。0秒2差は単なる反応の良し悪しの差で、脚色的にはほぼ互角。4角前では勝ち馬より手ごたえが良かったことを考慮すれば、負けて強しの2着だった。歴史的にもレベルの高さが伝わる好時計で勝ち馬と遜色ない立ち回り。菊花賞3着も含めて評価すると、むしろ中距離より長距離向きのスタミナ型の可能性も出てきただろう。いずれしても徹底待機に構えてきたにもかかわらず、これまで最速上がりは5走前と前々走だけというディープ産駒としては異色の存在。自ら新境地を切り開くようなカリスマ性はないだけに、人気を落として気楽に乗れるレースこそ活躍の舞台なのかもしれない。3強よりワンテンポ遅れて動きたい。 |